2008/12/30
個人情報保護法
私の友人と言うのは地元の人が少なく、他府県ばかりで、そのためみんなが集まって一杯やろうと言うことになると、年に1度、持ち回りで季節は交通事情の良い夏が多くなっている。2年前のことだが、こうした集まりをやろうと言う話が出てきて、順番から滋賀県の友人の家でと言うことになった。
この友人はとてもいい奴なのだが40過ぎで独身、ただいま花嫁募集中だったが、このグループではもう1人独身がいて、そいつはバツ1での独身だった。
滋賀県の友人はさすが独身貴族で、マンションの1人暮らし、大型テレビがドーンと置かれ、部屋の家具も高級なもので揃えてあった。
集まったのは6人だったが、食材は皆それぞれ地元特産の物で、料理も男だけしてみんなでやるのだが、これがそれぞれにこだわりがあって、「いや、そうじゃない」「これはこうだ」と喧しく、普段妻に「お前は喋り過ぎだ」と言っている者達としては、とても妻達には見せられない光景だった。
と、その時だった、突然電話が鳴った。
ちょうど漬物を切っていた滋賀県の友人は、隣で包丁が空くのを待っていた別の友人に「済まんけど、出てくれ」と電話を取るよう頼んだ。
「オーケー」頼まれた友人はそそくさとリビングの電話を取りに行ったが、この時リビングには誰もいなくて、みんなダイニングにいたので、暫くして「お前だ、早やく出た方がいいぞ」と言って帰ってきた友人の焦り具合が、いかにも妙な感じになっていた。
滋賀県の友人が「分かった」と言ってリビングに行ったが、電話に出た友人がひそひそとこんなことを言った。
「女だった・・・、しかも若い・・・」
これには他の一同「えー」となったが、「それでどんな感じなんだ」と言う話になり、「声からしても20代前半かも知れんぞ、それにいい声なんだこれが・・・」
「20近くも年が違うなんて犯罪だぞ」
「あいつも隅には置けんな・・・」
みんななぜかヒソヒソ話になっていたが、もともと人のプライベートを立ち聞きするような、姑息な精神には抵抗がある男ばっかり揃っているので、リビングに近づいて立ち聞きすることもできず、5人が息を呑むように黙って突っ立っていた。
確かにこの滋賀県の友人はこれまで浮いた話1つなく、誠実で几帳面、しかも割りと社交的なのだが、それは男に限られると言った感じだったので、バツ1の友人なんかにしてみれば、40過ぎで20代前半の女など、とても許しようの無い話でもあった。
やがてリビングの戸が空いて本人が戻ってきたが、その表情は出て行ったときと何も変わらぬ様子で、漬物を切り始めていて、これには周囲がどう反応して良いものか・・・となった。
「大事な電話だったんじゃないか、漬物は俺が切ろうか」
電話を取った友人がおそるおそる訪ねたが、「まあー、大事って言えば大事だが、それほどのことではないから」と言う返事が返ってきた。
私もさすがにこの一言は「余裕ジャン・・」って思ったし、カッコいいかもとも思ったが、それにごうを煮やしたバツ1の友人が、「おい、今誰か付き合ってる彼女なんかいるのか」とずけずけ聞くに至って、滋賀県の友人もようやく皆が何を思っているのか気づいたようだった。
「お前ら、何か勘違いしてないか」
「いや彼女からの電話かと思って・・・」電話に出た友人が小さな声でそう言うと、滋賀県の友人から「ばかだな、クレジット会社が、銀行口座から残高不足で引き落とせないって言う電話だよ」とぶっきらぼうな返事が返ってきた。
バツ1友人が思わず電話に出た友人の背中を肘でこずいていた。
「このバカが・・・、何でそんなことが分からないんだよ」
電話に出た友人はみんなから責められたが、無理も無い、近頃個人情報保護法のおかげで、銀行なんかは「○○銀行です」と言うが、クレジット会社だとたまに会社名ではなく、個人名で始まって本人が確認されると、会社名を告げるケースもあるようなのだ。
そう言えばこのごろ家にかかってくる電話でも、女で個人名、よく聞いて見ると健康食品、教材、怪しげな金融機関って言うのが多くなっているが、こちらは先に会社名を言えば切られてしまうからか・・・。
いずれにせよ、とんだバカ者の早とちりで暫く気まずい雰囲気になったこの日の宴会は、この友人を徹底的にバカ者にすることで少しだけ盛り上がり、みんな酒も飲んでいたし、その日はこの友人のマンションで全員泊まって、次の日それぞれが家へ帰って行った。
レジェンド・オブ・たわけ・・・私のブルーのシャツ事件に次いで、この事件も集まるとよく酒の肴になる話なのである。
ちなみに滋賀県の友人は今も独身だが、多分金は持ってると思う。
最後に、私がこのブログを始めて3ヶ月、最初自分が書くものを読んでもらえるのかとても不安でした。
でもこうしてブログを始めて良かったと思っています。
皆さんとこうして知り合えた事は幸せでしたし、コメントを頂ける事はこんなに嬉しいことは有りません。 ありがとうございました。
では1年の最後に付き、皆さんのこの1年の労苦をねぎらい、新しい年をお祝いして、・・・
はなはだ僭越ではございますが・・・・乾杯!
健康で良いお年を・・・。