「特集・人口の自然調整期」

日本の人口推移を見てみると、必ずしも常に増加を続けて今日に至った訳ではない事が伺えるが、例えば縄文前期には10万人前後だった人口は、中期には25万人にまで増加するものの、縄文最晩期には8万人にまで減少し、これが弥生時代中期、後期には60万人に達する。

縄文後期から晩期の急激な人口減少は、寒冷化であり、日本の人口は氷河期と氷河期の間、間氷期に措ける寒冷化と温暖化に拠って発生する栽培植物、自生植物、狩猟対象生物の増減に影響されながら波形を描いて推移して来た事が見て取れる。

この為、温暖化に向かうときの人口増加は急激だが、寒冷化に向かった時の人口増加は温暖化時に比して緩やかになるが、これはその環境に適合するまでに時間がかかる為であると推定され、寒冷化は縄文後期に始まり、そのピークは弥生後期に訪れ、弥生時代の推定人口は60万人だが、弥生後期の後ろ半分には55万人まで人口は減少したものと思わる。

その後奈良時代から少しずつ寒冷化は緩み、平安期には温暖な気候が発生してくる。

奈良時代のピーク、つまり人口が減少し始める直前の人口は560万人、同じく平安期のピークには600万人にまで増加するものの、室町時代に突入すると約15万人ほど人口は減少する。

武家社会の台頭により、戦乱に拠る人口減少が始まってくる。
縄文時代の平均余命は女子が男子より1年ほど長いが、これは生物学的強度に拠る自然偏差に起因する。
しかし弥生時代には男子の余命が女子の平均余命を上回るのは、食物の独占率が男子の方向に傾き、加えて後期の寒冷化が存在する為である。

この事から、縄文時代は男女の食物配分が均等、若しくはそれに近い状態だったものが、弥生時代には男子の食物独占率が女子のそれを上回った、簡単に言えば男尊女卑がこの辺から発生してきたと言えるのかも知れない。

そしてこれが鎌倉期ともなれば、男子の平均余命は女子の平均余命より3年も短くなる。
長い混乱、戦争社会が始まってきたのであり、鎌倉時代の初期には750万人だった人口は乱世と言う環境に適合して行き、鎌倉後期には900万人、安土桃山時代には1200万人にまで増加するが、乱世にも拘わらず順調な人口増加が可能だった背景は、ひとえに温暖な気候のおかげと言えるだろう。

以後江戸初期には1400万人だった人口は、1700年には2500万人に達するも、1783年に発生したラキの大噴火に象徴される世界的火山噴火、地震災害時代の到来が存在し、これに先立って1700年初頭には日本でも宝永大地震、宝永大噴火が発生し後には浅間山も噴火、これに拠って寒冷化現象を迎えた日本は、周期的な飢饉に遭遇する事になり、人口は2600万人前後で頭打ちとなる。

1700年後半から始まった世界的寒冷化は19世紀まで続き、この間に世界は劇的変化をして行く。
寒冷化は一つの危機だが、それを乗り越えた先には常に新しい社会システムが誕生している事に注目したいものだ。

現在、2016年の統計では日本の人口は1億2千700万人であり、これまで人口は増加こそすれ減少することは無かったが、それもここ70年ほどの期間の事で有る事を忘れてはならない。

その国家の人口は70年前までは気象や戦争と言う、どちらにしても災害に拠って増減しながら、その国土で養える人口が自然調整されてきた背景がある。

人口の基本は社会環境と言う漠然性を持っているが、その社会は生物学的な本能や自然環境を離れては存在できない。

日本などは幸運な事に「鎖国」に拠って第一次産業に拠る国家維持可能人口が判明している。
2600万人は日本国土に最大級の災害が発生しても維持できる基礎人口であり、この人口数が明白になっている国家は日本以外に存在しない。

人口の適正数は最も豊かな時を適正とするのではなく、最も貧しい時を適正数としなければ、社会の半分の時期が過剰人口になってしまう。

日本は今人口が減少していると考えるのは少しおかしい・・・。
気象の変動や社会的混乱に拠って人口が減少がするのは、これを適正と言うのであり、どの時代もそのピークは衰退の始まりであり、人口の増減を社会がコントロール出来るのは諸因の中の数パーセントに過ぎない。

これらをコントロールしているのは基本的には本能、そして環境と言う地球の力だと思わねばならないだろう。
常に右肩上がりだったのは、ここ70年ほどの事であり、その以前は上下が普通だった。
繁栄するときも有れば衰退する時もある。これを一律に考え、最大人口を基準に物事を考えるから話がおかしくなる。

これでも西暦1700年頃から比べると、5倍近くに人口は増加しているのである。

とても大きく繁栄したと言えるべきもので、これを減少と言うのではなく、自然調整期に入ったと考えるのが正しいのではないか、そう私は思うのだが、如何か・・・。



関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

old passion

Author:old passion
この世に余り例のない出来事、事件、または失われつつ有る文化伝承を記録して行けたらと思います。

[このサイトは以下の分科通信欄の機能を包括しています]
「保勘平宏観地震予測資料編纂室」
「The Times of Reditus」

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

月別アーカイブ