「国家の言葉」

1977年、日本赤軍によってハイジャックされた日本航空第472便は、犯人等によってバングラディッシュの「ダッカ」に強制着陸させられ、そこで日本赤軍の「丸岡修」、「坂東國男」等は472便の乗務員14名、乗客137名を人質に取り、身代金600万ドルと、日本に拘留されている「奥平純三」、「大道寺あや子」等9人の釈放を求めた。

これに対し、当時の日本国内閣総理大臣「福田赳夫」は「人命は地球よりも重い」とし、日本赤軍の要求を全て丸呑みし、身代金を払って日本に拘留されていた日本赤軍メンバー達を釈放したが、当時の国際社会はこの決定に対し身代金も然ることながら、犯人等の行動を許し、更に拘留されている危険人物たちまでも国際社会に放出する行為は、国際社会に対する重大な背信行為だと非難した。

「福田赳夫」の「人命は地球よりも重い」の言葉は「日本は地球よりも重い」と国際社会に聞こえたのであり、この背景には日本赤軍の要求が受け入れられない場合、人質の中のアメリカ人から先に殺害するとしていた犯人側の条件提示が存在した為である。

今も同じだが、アメリカの気分を害しては日本はやっていけない事から、アメリカの顔色を伺っていた福田政権の事情が言わせた「人命は地球より重い」の言葉は、容易に国際社会から見透かされていた。

また当時の国際社会に措ける「正義」に対する概念は現代よりも比べ物にならない程大きく、為に同じようなハイジャック事件が発生した時、例えばドイツやフランスではハイジャックされた人質を救出する場合、その作戦と同時に、人質の中で氏名が判明している者たちの親族に、当人が殺害される危険性を説明し、特殊部隊強行突入の許可と、金銭的補償交渉提示が為され、実に人質の親族達の53%が「正義の為で有れば名誉な事だ」と交渉に応じていたのである。

それゆえこのような覚悟を持った欧米諸国からすれば、アメリアの顔色を伺い、更に危険人物たちを事実上まとめて国外追放に出来たような日本の決定は許しがたい行為だった訳で有り、今般発生したアルジェリアの武装組織による人質事件を鑑みるに、日本のように初めから正義意識のない国はともかく、国際社会までもがどこかで「正義に対する責任」に関して優しくなりすぎている、或いは責任が分散されて弱くなっている感を拭いさることができない。

元々権力であれ暴力であれ、その力は集積される事で更に大きな力となるが、力の弱い者が集まる結束は責任と言うものが失われ、「結束して対抗する」と声高に唱えられながら、その実何もできないものである。

日本は言うに及ばすフランスがそう、アメリカがそう、祖国に家族を残し、北アフリカでその国家の繁栄と自国の繁栄、しいては女房子供のため、父や母のために働いていた人たちに何をしてくれた、何もしてやれず、正義と言う大義すら与えてやれなかったのではないか、無念である。
つくづく無念である。

また、1990年に発生したイラクによるクェート侵攻、所謂「湾岸戦争」に際して発生したイラクによる外国人拘置事件のおり、ここでは世界各国の外交官やその関係者が「サダム・フセイン」大統領によって拘束されたのだが、日本の駐イラク大使がフセイン大統領にこんな要求をしていた。

「日本はこれまでアメリカや欧米諸国よりは遥かにイラクに対して好意を持ち、経済的にも政治的にも支援してきた、同じ拘留される身分にしても、日本人には格別の処置が取られなければならない」

そうだ、日本は欧米諸国の顔色を伺いながらも、イスラム諸国との関係を保ち続けてきたし、その宗教による差別意識も持っていなかった。

一方、第二次世界大戦を通じて世界で唯一アメリカと戦争を起こした日本と言う国を、これまでイスラム諸国の国民はどこかで畏敬し、誇り高い民族と言う憧れを持っていた。
日本とイスラム諸国は遠くても心では近い国だったのである。

ゆえ、今回のアルジェリアの人質事件でも、それがイスラム武装組織であり、尚且つ「ジハード」「聖戦」を掲げるなら、日本はこれを主張しなければならなかった。
少なくとも日本人の人質には格段の処遇を求めるに足る根拠がある事を主張しなければならなかった。

勿論、こうした事を言えば国際社会からは自国だけが大切なのかと非難されるだろう。
だが自国国民の生命を守れない国家など、国家ではない。
どんな手を使っても自国国民の生命を守る姿勢は、長い目で見れば必ず「国威」となって行くのである。

この事は1977年の福田赳夫総理の「人命は地球より重い」の言葉に似ているかも知れないが、その本質はこれと対極を為す、国家として最も重要な事なのである。

その国家が国家維持のために為す反社会的勢力に対する対応は、その国家の方策が尊重されなければならない。
従って今回のアルジェリアの人質事件に関して、アルジェリアが取った行動を非難する事はできない。
だが、武装勢力がイスラムを掲げ、聖戦を唱えるなら、日本国はこれまでのイスラム諸国との関係、その思いの程を主張し、聖戦であるなら尚のこと、日本人人質には格段の処遇を要求する。

「この事はこれまでも、今も、これから先も同じだ、良く覚えておくが良い・・・」
「アルジェリアの為に、その国家と日本、そして息子や娘、妻や両親の幸福と安寧の為に技術者として働いていた者を、聖戦と言うなら何故殺した」
「返せ、一人残さず元のままにして家族の所に返せ!」

アルジェリア武装勢力による人質事件に際し、犠牲となった者に対して心から敬意を表すと共に、その親族には謹んで哀悼の意を捧げる・・・。


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