第二章・7「独立」

緒長と吉田は翌日の飛行機で上海から沖縄に帰国したが、それを待っていたかのように、香港の反日インターネットサイトから「習近兵」中国国家主席が非公式ながらも、沖縄の独立を支持すると言う情報が流れ出す。

日本とアメリカ軍基地のある沖縄を対立させる事でアメリカと日本の結束に皹(ひび)を入れ、中国の軍事的優位性を保持する作戦を説いた、徐や朱栄陽財閥らの動きに中国共産党が乗った形だったが、この翌日には同じく日本の不幸は韓国の幸福と考える、感情的な韓国「朴恵思」大統領は、やはりインターネットの国内世論に押され、後先考えずに「韓国も沖縄の独立を妨げない」と発言してしまい、その翌日には北朝鮮も沖縄独立を支持すると表明したのである。

もはや沖縄の独立は周辺諸国から囲い込まれた形になったが、これに対して県民投票条例を提案した緒長沖縄県知事、激怒したのは阿部総理の周辺だった。

「あの売国奴が」
「日本を陥れて中国や韓国に媚を売るか!」

と言った意見が噴出し、ここで沖縄の懐柔策は影を潜めて徹底的な締め付けを行った結果、ついに沖縄県民は生活の危機に直面する事になる。

「ここで折れればまた卑屈な顔をして政府の顔色を伺いながら、金を恵んで貰う暮らしに逆戻りしてしまう」
「それで良いのか、私はもう耐えられない」

そう言って議会や民衆を説得する緒長と吉田、その一方で徐黄王から紹介されたドイツの若い経済学者を沖縄に招き、彼に沖縄が独立した場合の経済政策の立案を依頼し、彼、ケビン・シュナイダーはIMFの融資計画と、アメリカ政府からのドル借款案を出して、ケビンのブレーンが諸外国と交渉に当たり始めていた。

こうした活動の資金は全て上海財閥から流れていたものだが、やがて世界中の関心事となった沖縄独立問題は、僅差で県民投票条例が沖縄議会を通過すると一挙に具体性を増し、日本政府は憲法違反だと言い出す。

しかし具体的に日本国憲法は、日本に措ける特定地域の独立に関する規定を持っていない。
唯一の拠り所は日米安保条約に有ったが、これを盾にするなら日本国憲法より日米安保条約が優位性を持つ事になる。
アメリカ政府は日本に対して早期の問題解決を要請するが、経済的締め付け以外何の方策も無い日本政府に対し、沖縄臨時経済担当者、ケビン・シュナイダーは既にIMFへ独立した場合の融資額と条件を提示するに至っていた。

また同時に非公式で次期大統領と目されるアメリカのマリア・クレイトン上院議員に接触し、こちらではアメリカ軍の基地は現状維持し、その土地使用料を実際に防衛上の恩恵を受ける日本が沖縄に拠出する事で、事態の収拾を図ることが話されていた。
つまり沖縄は同じ基地に占領されるとしても、今までのようなお恵みではなく、具体的な契約によって正規の報酬額を得る形になる訳であり、日本が拠出する額も今までと何等変わらないが、その支払いには義務が生じる形になったのである。

唯この非公式折衝には裏があり、中国が経済的に崩壊する情報は既に掴んでいたものの、どう動いて良いか解らないアメリカ政府は、沖縄の緒長知事が中国崩壊とその後に影響を与えるだろう上海との人脈を持っている事を知り、その仲介役を務める事、中国崩壊のプロセス情報を提供する事を条件に沖縄の独立を容認し、日本が支払うべき基地使用料を一時的にアメリカが立て替えると言う条件になっていた。

尚且つ、実際に中国の現体制が崩壊し、民主国家となったあかつきには沖縄基地の一部を中国本土に移転する案まで出ていたのであり、こちらも中国現体制崩壊の支援を条件に徐黄王や朱栄陽、張貴進らが承諾していた。

これらの意味から日本政府は全く使えないが、ある種これから混乱が始まる、その中心付近にいる緒長知事の重要性を認識したアメリカのマリア・クレイトンは、大統領就任早々大きな国際貢献の実績を得る事が出来、また基本的に独立や自由と言う言葉が出ると抵抗し辛いアメリカの国民感情も逆撫でずに済むのである。

更に日本の混乱こそが韓国経済再生の道と考える韓国経済財閥は、韓国出身の国連事務総長「パン・ギボン」に圧力をかけ、彼は具体的にはどこの国とまでは言わなかったが、「民族の独立と自由は国連憲章によって保障されている」「何人もこれに弾圧を加えてはならない」との声明を出すのであり、同じアメリカの同盟国として日本よりは、独立した沖縄の方がより強い信頼関係を築けるとした意見が韓国を席巻していた。

4日後、沖縄独立県民投票が実施され、僅差で沖縄独立案は成立した。
国連は臨時安全保障理事会を開き沖縄の独立を検討したが、日本の混乱を望む中国、ロシアは賛成、フランスも賛成し、イギリスとアメリカが棄権し、これによって沖縄の独立は事実上容認され、沖縄の国連加盟は5年後と定められた。

201○年9月9日、ここに「琉球国」が成立したのである。







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