第三章・1「国軍」

その国家の軍が誰のものかと言う定義は難しい。

古代中国で王を名乗る場合は民衆の総意を担保とする必要が無く、この場合は軍は王に全て帰属する。
しかしこれが皇帝を名乗ると、その権威は天意に拠って担保される事になり、軍は国家民衆に帰属する事になるが、皇帝の定義と共に軍の帰属するところはいつの時代も不安定だった。

すなわち皇帝が天意なら民衆も天意、軍も天意なのである。
元々中国大陸に措ける軍の歴史、その始まりは王や皇帝に有り、ここでは軍は王や皇帝に帰属する事から、例えば民衆が飢えに苦しんでいても、或いは民家が延焼していても軍はこれを助ける義務が無い。

軍は王若しくは皇帝、或いは丞相、相国、軍師の命令が無ければ動けないが、これを平和な時に限って、王や皇帝の命に支障をきたさない程度で民衆の危機を救う事が始まったのは前漢・文帝の頃(紀元前180-157年)からで、これは平和な時代が無ければ成立しない話だった。

それまでの時代は軍が民衆を助ける事が出来るほど平和な時代が無かったと言う事である。

以後、中国に措ける軍が民衆に対して行える援助は、皇帝の命に支障の無い範囲で皇帝や丞相が許可する範囲、容認する範囲、皇帝や丞相の命に拠って行われる事になり、皇帝が天意を意識する中で、天意をまた民とする思想が軍を誰のものと考えるかを不安定なものにして行った。

すなわちその当代の者達に拠って都合の良い解釈や、恣意的な感情に拠って軍が解釈されるようになったのであり、更に解り易く言うなら平和な時の軍は天意民衆に帰属し、動乱時の軍は為政者に帰属し易いと言う事である。

中国の武力、軍は三層になっている。
人民解放軍の兵力は陸軍機動部隊が84万6000人、海軍24万1000人、空軍40万人、国境警備部隊17万6000人、沿岸警備部隊15万人、防衛施設管理部隊、技術工作部隊が16万人、技術研究部隊総数3万4000人の、約2010000人で構成され、兵員数はミサイルや防衛機器費用の増大と、景気低迷から2013年度の実績2200000人から2014年度末には18万人近く減少していた。

また人民解放軍は基本的に共産党の軍隊であり、中国国防相は人民解放軍の指揮権が無い。
つまり人民解放軍は中国の最も古典的な形の軍隊、共産党と言う王の軍隊と同義であり、天意を根拠とした皇帝の軍、国家軍ではないのであり、この点を諸外国は誤認してはならないが、実質中国国軍に相当する軍隊は「中国民兵組織」であり、これは人民解放軍の引退者、或いはリストラされた軍人達で組織され、一般民衆の参加も多く、その総員数は900万人とも言われる。

この他に中国警察組織として「武力装備警察部」が存在し、この総員数は約70万人とも言われるが、中国民兵や武力装備警察部の人員は人民解放軍の情勢に拠って変化し、基本的に中国民兵組織や武力装備警察部は人民解放軍の下部組織として有事の際は動員されるが、更に人民解放軍の予備役は推定55万人で、これらは外的に対する有事概念を同じくするものの、国内の有事に付いては必ずしも一致した概念とは言えない。

1976年に周恩来死去を悼んで捧げられた花輪の撤去を巡って発生した第一天安門事件、いわゆる四五天安門事件の時には後に失脚する江青らの命令を人民解放軍が無視し、結局彼らは民兵を出動させているが、1989年に発生した北京大学の学生達による自由化運動、第二天安門事件、別名六四天安門事件の時は鄧小平の命令に従って人民解放軍が鎮圧に当たっている。

この事から有事の概念に付いて、外国からの攻撃に対しては人民解放軍、中国民兵組織、武力装備警察部が同じ有事の概念を共有するが、中国憲法の規定では全ての武装組織は共産党の領権とされながら、実際には中国共産党の正規軍は人民解放軍のみの規定となり、中国民兵や武力装備警察部はその人民解放軍の指揮権下に有りながら、それに従うか否かは各人民公社の裁定と共産党が一枚岩で有る事を前提としている為、場合によっては国内動乱時、その有事の概念が異なる場合が生じる。

つまり中国の三層構造の軍隊組織は国内に留まる有事の際、中国共産党の為の人民解放軍と人民が組織している民兵組織、また人民解放軍より民衆に接する機会の多い武力装備警察部が、共産党と民衆の対立が発生した場合、人民解放軍は共産党の防衛に当たる事は決定しているが、民兵組織と武力装備警察部はそれに従わない可能性が残っているのである。

これは妙な現実だが、蒋介石が率いた中華民国国軍と毛沢東率いた人民解放軍の攻防が薄く弱く中国国内に存在しているようなものであり、共産党と言う一党独裁政権が持つ恐怖支配の根底には民衆に対する恐怖心が有り、民衆の共産党による恐怖支配の脱却は、意外にも民衆そのものの生活の破綻によって発生する「もうどうでもいい」と言うような諦観、つまり経済的破綻なのである。

それゆえ中国共産党は国内経済が悪化すると国内有事が発生する事を恐れ、外国有事を強調する為に反日本、反アメリカを煽らざるを得ない訳であり、何が何でも経済成長を続けない限り、中国共産党は足元からぐらついてくる事になり、その一方アジアの大国としての体裁も保たねばならず、年々歳々こうした状況の板ばさみは激しくなり、習近兵のような笑顔だけが取り柄で国家主席になったような者では、既に国内の統治状態は風前の灯火だったのである。


関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

old passion

Author:old passion
この世に余り例のない出来事、事件、または失われつつ有る文化伝承を記録して行けたらと思います。

[このサイトは以下の分科通信欄の機能を包括しています]
「保勘平宏観地震予測資料編纂室」
「The Times of Reditus」

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

月別アーカイブ