第三章・2「拡大」

我々は通常意識する事は少ないが、多くのそれぞれ広さや深さの異なる社会と言うものが何枚も重なった中で生きている。

国家の中の自分、某市の自分、氏族の中の自分、姻戚の中の自分、家族としての自分、会社や組織の自分、選挙時の政治思考的な自分に、村や区と言った単位での自分など様々な時間的社会や空間的社会、或いは思想的な社会を生きている。

そしてこの事は世界中のどこの地域へ行っても存在し、勿論中国に措いても存在するが、中国の場合これらが全て共産党と言う直線に拠って小さな穴を開けられ、そこへ紐が通された状態になっているが、この穴は真ん中に開いているのでは無く、端の方に開いているのであり、従って厳しい状況、僅かな血を流す覚悟が有れば簡単に綴られた社会は紐から外れる。

人民解放軍と言えども、その兵士には家族が有り、育った村が有り、氏族姻戚が集まれば長老達の言葉に従わねばならないが、こうしたそれぞれの社会を抑え込んでいるものが共産党の恐怖支配なのであり、中国人民の中には共産党を良く思っていない人口の方が圧倒的に多い。

唯現状の生活が維持されたり、それに拠って恩恵がある為に、恐怖支配や不正を見て見ぬ振りをしているだけで、これらの支配は人民の生活の困窮に拠って開放され、綴られた何枚もの社会がそれぞれに動き出す事になり、軍で言うなら人民解放軍こそは結束が強いが、その下の武力装備警察部、国家民兵に至っては組織独立権が無い分統制は取りにくい。

最終的に国家民兵が民衆の側に立った場合、これを武力装備警察部が攻撃しにくく、こうした中で人民解放軍はその動員総数で4倍以上の民兵組織を全て殺傷し、叛乱する人民全てに砲撃が加えられるかと言えば、それはとても困難な事態に直面する事になる。

中国の三層構造軍は確かに外敵には強い。
だが独裁政権の所有物である人民解放軍より、いざとなったら数が多い国家民兵や武力装備警察部は人民解放軍よりは僅かに民衆の側にある。
この事から中国の防衛形態は外敵防衛には適しているが、国家内の混乱では軍同士が分離衝突する危険性をはらんでいる。

また人民解放軍はその初期、蒋介石率いる中華民国国民軍と対立していた事から、国費で軍を維持できず、軍活動は自力調達だった歴史が有り、言い換えればこの段階では軍と共産党は一体だったと言う事である。

そしてこうして蒋介石軍と戦っている間は古代で言うところの一つの王だった訳で、人民解放軍は共産党と同義でよかったが、中華人民共和国となった時点で共産党は王から皇帝になった訳であり、ここで人民解放軍は天意に基ずく国家の軍隊とならねばならなかったにも拘らず、以後も続く人民解放軍の自力調達の歴史は国家軍としての意識を薄くしたままだった。

1980年の経済危機では軍事予算が大幅に削減され、人民解放軍は民業を起こし、農地の開拓などあらゆる産業に進出して軍事費用を賄った。

1998年、共産党中央委員会から人民解放軍の民業進出は、導入した自由化経済の中で不当競争の発生となる為禁止されたが、それでもこの法律には厳しい罰則が無く、現在も学校経営に始まり投資会社、金融機関などあらゆる事業が展開されていて、単純に糧秣の調達だけでも、人民解放軍の調達能力は200万人が4ヶ月食べていけるだけの生産能力を持っている。

これらが軍自力調達で国費から支出されていないのだから、中国の防衛予算の公表など全く無意味としか言い様のないものなのである。

しかしこうした潤沢な物資調達能力と、作戦行動の高さは全て順調な経済に拠って成立しているものであり、実際に経済が落ち込みを始めると人民解放軍の自力予算は大幅に減少し、軍を維持することが困難になっていく。
更にそうした事情から国費にこれを求めようとする時には、既に中国経済は大幅な傾斜となっていて、他の予算すら満足に支出できない状態を迎える。

ここに人民解放軍の散逸が始まるのであり、経済開放政策以後、賃金の低い人民解放軍の給与を嫌って若い兵士が集まっていなかった事と相まって加速的に離脱者を増やす事になるが、一方民業の進出に拠って発生する軍の利権は不正や賄賂の温床となり、少ない国家からの給料に自力調達給与、いわゆる利権賄賂は当然の事として概念されるようになり、やがてそれはエスカレートして行きながら、軍幹部たちは資本主義のうまみを堪能して行く事になる。

そしてこうした展開も海外から順調に外貨が稼げる時は良いが、ギリシャ・ポルトガル・スペイン・イタリア・フランスなどの不良債権を抱えた国家に拠って、デフレーションに陥ったヨーロッパ共同体加盟国経済は、アブノミクス経済、いわゆる日本の無制限紙幣印刷政策を無効化するほど世界経済を落ち込ませ、世界経済の3位、4位が滑落した事によって第三国後進国の経済も落ち込ませ、ここに外貨獲得が減少した世界第2位の経済大国中国は実質経済成長率が下降に向かう。

その過程で共産党や人民解放軍のような表の経済から裏へ流れ、そこで回っている闇経済が急激な縮小を始め、それは地方の貧しい地域から影響が出始めるが、こうしたことが表面化した頃になると、農村部は全て不良債権化し農地は荒れ放題、経済危機を恐れた表経済の資本は海外へ避難し、大都市には生活に困窮した農村部人口が仕事を求めて大量流入してくる事になる。

また農村部から人口が流出する為、外貨が稼げない大国の経済は食料不足に陥り、この食料不足から来るインフレーションは次第に高次産業まで影響を拡大させ、一般大衆は貧しい上に更に大きな負担を強いられ、その負担分が益となって共産党関係者や軍幹部に集中してくる事から、民衆は壊れて崩壊した経済に在りながら、共産党関係者だけが以前のバブリーな生活を維持し、これをして共産党支配に疑問を呈する民衆の数は増大し、やがてその流れは中国各地に暴動となって拡散して行った。






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