第三章・3「恐怖の連鎖」

「魯迅」の弟「周作人」が白樺派の「武者小路実篤」の「新しき村」を中国に詳解した折、長沙にいた「毛沢東」はこれにいたく感銘を受ける。

後に彼が率いた中国共産党の初期は、まさしく武者小路が描いた理想だったかも知れないが、その理想の中に描かれる公平で自由、人間らしい生き方とは、突き詰めれば自分の世界、自分が描く都合の良い自由や公平、生き方である事に気付くのはその組織が後戻りできなくってからの事になる。

武者小路がそうで有ったように、自分の理想の世界は女に拠って崩れていく。
理想主義的な男ほど、女もその理想の中の原理で捉え易いが、その自身の女に対する理想、いや欲望が矛盾を生む事からは目をそむける。

それは自身の都合であり、第三者にとっては主催者の女も、その他も同じである事に気付いていながら自分が主で在る事に甘え、そこから理想と自分の欲望の狭間で思想的にも現実にも、もがき苦しみ、やがてそれは分離されて考えられるようになっていく。

後年「毛沢東」は自身の生涯を振り返るに、それは「失敗」で有った事に気が付いただろう。
だが既に時遅し、中国共産党は中華人民共和国になっていた。
この道は決して中国人民の幸福とはならない事は解っている。

だがそれを含めてこれが運命だったと割り切る毛沢東は、影で享楽的な生活を送りながら、表では清廉潔白な指導者として存在しなければならなかった。
若い女ばかりを集めて好きな麻雀に興じ、ニヤニヤ笑いながら対面にいる女の膝の間に自身の足を割り込ませ、手牌を見ている左の女の股間に手を延ばし、その表情を楽しむ。

そして周恩来はそんな毛沢東を微塵も見せないように政治を動かして行く。
周恩来がいるとどうしても自分がどこかで恥ずかしくなる。
だが国家主席として深い言葉で人心を集めなければならない毛沢東のその具合の悪さ。

実にこうした具合の悪さ、歪みこそが国を治める力なのである。
失敗である事は解ったとしても、これまで自分の具合の悪さからやってきた事、虐殺や粛清、裏切りを鑑みるなら、引き返す事は「死」を意味し、それもおそらく八つ裂きだろう。

自身がそれをしてきたから、引き返せばどうなるかは自分が一番良く知っている。
恐怖を紛らわそうと享楽と女の膝間に逃げ込み、敵対する者は徹底的に殲滅する。

中国共産党の歴史は、その恐怖から逃れるために振りまいた恐怖にまた追いかけられる恐怖の連鎖、典型的な王や皇帝の辿った道と寸分違わぬものだったのであり、これを担保するものが武力、人民解放軍だったのである。

そして時は下り、現在の中国共産党もこうした連鎖からは逃れられていないが、以前よりは安定し豊かになった分、享楽や女の前後を挟む恐怖が弱い。
育ちが良くて具合の悪さが半端な分、真ん中の享楽、女が膨らみ前後の恐怖は小さくなった為、やることが傲慢な割には覚悟が無い。
壊れる時は意外なほど脆いものだった。

中国軍の致命的な欠陥は最初に精鋭部隊である人民解放軍を使わなければならない事である。
武装警察部は軍事作戦以前の警察機構であり、民兵は人民解放軍の次の勢力、いわば予備役的な組織であるから、例えばアメリカのように初期の問題は州兵が動き、国際的な紛争の場合は連邦軍が動くと言うような仕組みの逆流になっている。

国内動乱の場合初期の小さなものはそれに見合った小さなものから動くのが定石であり、ネズミ一匹でも最初から師団が動かねばならない仕組みはどうしても小さな紛争を大きくしてしまう傾向に有り、また鎮圧の仕方もまったく事務的になってしまう。
つまり感情が失われた攻撃になってしまう。

各地で生活できなくなった民衆がホームレス化していく中で治安は悪くなり、警察部は既に逮捕者が増加し、刑務収容所施設の限界を迎えていた事から、中国政府は簡単な刑でも見せしめの為殺処分する方針を発表していたが、やがて仮でも裁判を開かねばならない現実が、裁判所で多数の罪人を留め置かねばならない事態を引き起こし、事実上裁判が間に合わなくなってきた。

この為政府は新たに犯罪者の即時射殺認可令を出していたが、これによって恣意的に殺された民兵に参加してた民衆の一人が警察部と衝突する事件が発生し、ここから地域的に民兵と警察部の対立が発生して来ていた。

またこうした中国国内の動乱に対して新疆ウィグル自治区、南西部の国境付近では以前から対立していたイスラム勢力が力を増し、パキスタンなどから補給される軍事物資などで武装したウィグル独立戦線が結成され、この動きを極秘裏に後方支援していたのが徐黄王、朱栄陽、張貴進等と彼らを傀儡としていたアメリカだった。







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